梅川

義太夫の7月の浴衣会での私の出し物は「傾城恋飛脚 新口村の段」。
1月に前半をやり、今回は後半。

この話しについては過去記事
つっころばしみたいな男 その1
つっころばしみたいな男 その2
に詳しく書いた。

新口村という田舎から大阪という都会に出て、商人になり、
それなりに出世した男忠兵衛が、
梅川という傾城(遊女)に入れあげ、公金を横領してどうしようもなくなり、
二人で落ち延び、故郷の新口村で実の親に出会い、さらに落ち延びて行く、
というお話しだ。

忠兵衛という男は何とも情けない、役にも何も立たない男なのだが、
それでも優男で、いいところがあるのだろう。
そういう男を「つっころばしみたいな男」という。

で、女の方だけれど、これがなかなか演じにくい。

「全体に力が入り過ぎ。
 梅川は西の方の人なんだからさ、
 東男に京女って言うでしょ。」

「梅川はもっとさ、もったりまったりした女だから。
 だから一緒に逃げて行けるんだから・・。」

なるほど、確かに私はそんな男と一緒に逃げたりはしない。


明烏

7月に義太夫の浴衣会が終わると、
また半年新しい演目に取り組む。

今年の浴衣会での私の出し物は、近松門左衛門の「冥土の飛脚」をベースに、
のちに菅専助、若竹笛躬によって改作された「傾城恋飛脚」の「新口村の段」。

義太夫節で語る文楽の出し物の三大演目は
「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」「菅原伝授手習鑑」で、
これが何段にも分かれているのだから、これだけでも「やりで」があるし、
他にも人気演目は山ほどある。

「新口村」を一年やって、世話物(下世話な男女の話し)は飽きたから、
三大演目のような時代物(貴族や武士階級の大事件)で
切った張ったの大立ち回りもスッキリしていいなあ、なんて思っていたけれど、
やっぱり、どうもおどろおどろしたものがやりたくなる。

本当は「曾根崎心中」をやりたいけれど、
これは著作権が文楽協会にあって、勝手にやるわけにはいかない。
「心中天網島」「女殺油地獄」とか・・。


そこで新たにやってみたいものは。
「明烏」


新内節に「明烏恋泡雪」(あけがらすこいのあわゆき)という演目がある。
本当にあった心中事件を題材にしている。
春日屋の若旦那時次郎が吉原の女郎浦里に入れあげて身を持ち崩す。
時次郎と別れるように古木に縛り付けられて折檻される浦里を時次郎が助け出し、
禿のみどりと三人で塀を越えて逃げたと思ったらそれは覚めてみれば跡もない夢であった、
というお話し。


落語の「明烏」(あけがらす)はこの前段で、堅物の時次郎に閉口した父親が、
町内の札付きの源兵衛と多助に時次郎を吉原に連れていってもらったら、なんのことはない、
朝様子を見に行くと、うぶな時次郎に花魁がぞっこんになって離さない、というお話し。


これが義太夫節になると、「明烏六花曙」(あけがらすゆきのあけぼの)
浦里に岡惚れしている彦六が、浦里を助けて一緒に逃げるつもりで縄をほどいてやり、
路銀を預けて、お宝の巻物を取りに行った所をとっつかまり、
浦里は助けに来た時次郎と娘のみどりと夜明け烏の鳴く頃逃げて行った、というお話し。
義太夫節は男と女の切羽詰まった状況を最後はチャリ場(おふざけ)で終わる。
そこが義太夫らしい。


「まあ、ちょっとまだそれは無理じゃないかい」(その演目はちょっと難しいよ)
という師匠が、「やってもいいよ」と言ってくれなきゃ、ない話だけど・・・。


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