絶版

十年程前、妹と親の家を片付けた時、
そのほとんどのものが、全く必要のないガラクタであり、
それらを処分する時間と労力とお金が半端なくかかる、という事実に
愕然とするというよりは、むしろ、猛烈に腹がたった。

私は親の家まで新幹線で通い、
地元の妹はゴミの日を狙って出す大量のごみをとがめられ、
車で直接焼却場に運び込むことを何回もして、
なんとか終決したけれど、
もう、家の片付けなど、二度としたくはない。

自分はそうはならないように、と思ったはずなのに、
どうやら、我が家も息子たちにとってはいらないものの宝庫で、
申し訳ない。早く、なんとかしたい。


とは思いつつ、古い義太夫の床本(台詞と譜面が一体となったもの)を
買い込んだりして、困ったものだ。

義太夫床本2
(心中天網島 時雨炬燵)
義太夫床本5
(大きさはそろっていませんが、上の本の最後の見開きです。
 黒い墨書きが詞、朱色の字は朱と言って、三味線の手。)

こういう床本はもう印刷販売されていないので、
太夫さんだった人の遺族が売りに出したり、義太夫協会が販売会をしたりしている。
文楽の人は師匠からこういう床本を借りて、真似て手描きをして使う。
私たちは自分が読める字を手描きする。

こういうものをこんな素人にバンバン売ってしまっていいのだろうか。
こうやって貴重な資料がどんどん散逸していくのに。



長唄の譜に青柳譜というものがある。

青柳譜  青柳譜2

(これも大きさが揃っていませんが、左が表紙、右が出だし部分)

これが現在、版元で印刷を停止してしまい、
印刷済みのものを順次販売して、売り切れ次第終了なのだそうだ。
すでにこの、「蜘蛛拍子舞」という譜面は絶版である。

えええええ!である。
私でさえびっくりだから、本職やら、これから本職を目指す若者やら、
芸大受験生やらは本当に困るだろうに。

私が親の家を片付けた時のゴミのように、
必要のない人や興味のない人には全くどうでもいいゴミなのだけれど、
でも、確実にこうして文化が滅びていっているのに・・・。


50年とは言わない、10年後、日本はどうなっているのだろう?

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